夏の夕日
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僕は久しぶりに屋上へと続くその階段を上っていた。
今日はいい天気だ。屋上はさぞかし気持ちが良いだろう。
ドアノブに手をかける。相変わらず鍵はかかっていない。ノブを回し、扉を開く。
コンクリートの床と錆びて塗装が剥げた手すり、そしてその先に続く青い空。
懐かしい眺めだった。放課後はいつもここで本を読んだものだ。
高校時代の僕は読書が好きだった。それこそ数え切れないほどの本を読んだ。
屋上の隅のほう、かつての指定席に腰を下ろし、持ってきた文庫本を開く。
そうしてみたものの、視線はいまだ懐かしい風景にとらわれていた。
心地よい風が吹き、運動部員たちの声が聞こえる、昔のままの風景。
今朝見た夢は、高校時代のものだった。
僕はいつものように屋上で本を読んでいた。
空は青く、遥か彼方に入道雲が浮かんでいた。
屋上の扉が開く。足音がこちらに向かってくる。
目の前まで来たところで、足音の主は立ち止まり僕に声をかける。
「よっ!やっぱり今日も来てたんだ。何読んでるの?」
声に応えるため顔を上げると、彼女は僕に笑いかけた。
夢はそこまでだった。
気がつくと僕は自分のベッドの中にいた。
枕元の時計を見る。七時少し前。いつもより少し早い目覚めだった。
夢の中の光景は僕の心を捉え、しばらくの間僕はただ呆然としていた。
彼女の声。細く長い脚。制服のスカートからすらりと伸びた脚。風になびく長い髪。
綾瀬麗奈。高校時代、僕が読書以外に愛したのは唯一、彼女だけだった。
目が覚めるにつれ、夢の記憶は急速に薄れていった。
現実に無理やり引き戻されるような感覚を覚える。
戻りたくない。もう少しだけ。しかしそれは儚く消えてしまう。
学校に行く気はとうに失せていた。
朝から一日本を読んで過ごした。
高校時代に読んだものばかりだった。
高校三年の夏以来、僕は新しい本は買っていない。
それでも僕の部屋は文庫本で埋め尽くされていた。
昼過ぎになり、四冊目の本を開いて気づいた。
5ページ目の端に染みがある。
茶色い、小さな染み。綾瀬がつけたものだ。
オレンジジュースを溢してしまったと馬鹿丁寧に謝罪された。
新しい物を買って返す、と言うのを断ったのだ。
この程度ならなんてことはない、読むのに支障はないから、と。
あるいはそうしてもらえばよかったのかもしれない。
そうすれば僕がこの染みのついた本を開くことは二度となかったはずだ。
今になって彼女を思い出すこともなかった。
「あの屋上に行こう。」
そう決めた。我が母校の屋上だ。
僕はすぐに着替えて家を出た。
高校までは歩いて15分ほどだ。すぐに着いた。
正門から堂々と入る。
怪しまれないよう制服を着てきたのだ。ちょっとしたコスプレ。
知り合いに見つかっていたらやばかったかもしれない。
とにかく、制服のおかげですんなりと目的の場所に辿り着くことができた。
どれくらい経ったのだろう。
結局、持ってきた本はほとんど読んでいない。
気づけば太陽は西の空に傾き、赤みを帯びはじめている。
ふいに屋上の扉が開く。
夢の光景が蘇る。綾瀬?まさかな、ありえない。
足音が聞こえる。そしてふいに途切れる。
心臓の高鳴りを感じる。どうにか抑えつつ、そちらを伺った。
少女がいた。綾瀬ではない。
それは当然のことだった。彼女であるはずが無い。
わかっていながらもどこかで期待していた自分を憎らしく思う。
少女はこちらに気づく様子もなく、ただ手すりに寄りかかって遠くを眺めていた。
*
「よっ!まーた読書かぁ?好きだねー。」
休み時間に一人で本を読んでいた僕に彼女は声をかける。
それはよく透る声で、僕にとっては天使のそれに等しいものだった。
「別に良いだろ。これしか楽しみが無いんだ。」
「く、暗いなー。もっと若者らしい趣味でも見つけなさいよ。」
「良いんだよ。」
「ところで何読んでるの?」
「…何でもいいだろ。」
「見せて見せて!」
「邪魔しないでくれよ。」
「あーこれ面白そう!後で貸して!」
「わかったわかった、ほら。」
僕は読んでいた本を閉じ、彼女に差し出す。
彼女は少しの困惑を表し、言う。
「いや、読み終わってからでいいって、悪いし。」
「僕はもう二度読み終えた。今三度目だ。」
「そういうことなら遠慮なく。ありがと。」
満面に笑みを浮かべた彼女を見ていると、僕の顔も自然に綻んだ。
彼女はそれを見て更に嬉しそうに笑う。
高校時代の僕には友人はほとんどいなかった。
彼女が唯一であったとも言えるかもしれない。
休み時間だろうと授業中だろうと、
朝から晩まで本ばっかり読んでいるような奴に友達がたくさんいるはずも無い。
流行の音楽やファッション、テレビの話題にはついていけない。
他人から見た僕は実につまらない人間であったことだろう。
もちろん僕自身も自分が面白い人間であるなどとは思わなかった。
学校を休むこともしばしばだった。担任によく小言を言われた。
そんなことで社会に出たらどうするんだ、とかなんとか。
綾瀬はそんな僕にも親しみを向けてくれた。
僕の話を聞いてくれた。僕が薦めた本を読み、感想を聞かせてくれた。
そんな彼女に惹かれたのは実に自然なことだった。
彼女のほうがどう思っていたのかはわからない。
少なくとも好意は抱いてくれていたはずだ。おそらく。
高校の三年間、彼女と同じクラスにいられたことは、
僕にとってこの上ない幸運であった。
彼女は時々屋上に来て、僕と一緒に本を読んだ。
放課後、日が暮れるまでの僅かな時間。
太陽が傾き辺りが赤く染まり始めると、僕たちは本を閉じて話をした。
彼女のこと、僕のこと、読んだ本のこと。
僕はその時間が何よりも好きだった。
夏休みにも僕は毎日のように学校へ通った。
暑い昼間は避け、夕方から。いつもと同じように本を読んだ。
やはり時々ではあったが、彼女の姿もそこにあった。
そんなときには、僕たちは普段よりもたくさん話をした。
高校三年にもなると、僕たちの話の内容にも、
受験生のそれらしいものが含まれるようになった。
彼女は勉強が良くできた。学年でも常に上位だった。
僕は彼女に、どこの大学へ行くのかと訊ねた。
「地元の国立を受けようと思うの。」
それは意外な言葉だった。彼女の学力ならばもっと良いところへいけるはずだ。
「なぜ?」
僕の言葉には否定的な響きが混ざっていたかもしれない。
それが彼女を傷つけるのではないか、と不安になった。
「両親がね、地元で進学しろって。まあ一人娘だしね。」
彼女の声は少しだけトーンが下がったように思われた。
「そうか。」
「君はどこに行くの?東京?」
僕の成績は決して褒められるようなものではなかった。
中の下、といったところか。下の上かもしれない。
大学も適当な私立に入れれば良いや、なんて考えていた。
「僕も地元に残るよ。綾瀬と同じところに行く。」
自分の口から出た言葉に驚いた。
考えてもいなかったことなのに、それは実に自然に発せられていた。
「あたしね、正直言うと東京の大学に行きたかったんだ。」
なんと言えばよいのか良くわからなかった。どんな言葉をかけるべきなのだろう。
黙って彼女の横顔を見る。
僕の想像とは裏腹に、彼女はどこかすっきりしたような表情だった。
「でも君がここに残るなら…」
彼女はそこで言葉をいったん止める。
僕はその先に続く言葉を想像した。鼓動が高まるのを感じる。
しかし結局、彼女からその続きが語られることはなかった。
しばらく続いた沈黙の中で、僕の抱いた淡い期待は空中に霧散していった。
「でも君の成績は酷いね。あれじゃ受からないかも。」
少しだけ意地悪な顔をしながら彼女は言った。僕は一気に現実に引き戻される。
「…返す言葉もない。」
「明日から勉強しなさい。」
「…そうします。」
「そしてここでの読書はしばらくお預け。」
「そんな…ご無体な…。」
「君はあたしを”先輩”って呼びたいのかな?」
「わかりました。」
「よろしい。では、最後の読書を楽しみたまえ。」
「はい…。」
その夏、僕は彼女との約束を破り、何度か屋上へ行った。
しかし結局、綾瀬は一度もそこに姿を見せなかった。
僕は諦めて勉強をするようになった。新しい本を買うのもやめた。
頑張って彼女と同じ大学に入ろう、そう誓った。
八月が終わるころには、模試の成績も上がっていた。少しだけ。
九月一日、二学期最初の日。
多くの生徒にとって憎むべき対象だったその日は、僕にとっては違っていた。
久しぶりに彼女に会える日。それ以外の何ものでもなかった。
湧き上がる感情をなんとか抑えつつ、僕はいつもより早く学校へ向かった。
その日、彼女は死んだ。
交通事故だった。
横断歩道を渡っているところを、信号無視のトラックに跳ね飛ばされたらしい。
即死だったそうだ。原型をとどめぬほどにぐちゃぐちゃになっていたらしい。
葬儀でも彼女の死に顔を見ることはできなかった。
そのせいだろうか、涙は出なかった。信じられなかった。
どうして彼女が死ぬはずがあるだろうか。
それ以来僕は学校を休まなくなった。
勉強により多くの時間を費やすようになっていった。
彼女との約束を果たすため。同じ大学に入るため。
気がつけば僕の成績は学年でも上位に入るほどになっていた。
親や担任から、東京の大学への進学を勧められた。
東京の大学なんて興味がない。僕の中にあるのは彼女だけだった。
春になり、僕は夏の日の約束を果たした。
しかしそこには彼女の姿はなかった。
*
気がつくと、太陽はその大きさを増し、世界を赤く染め上げていた。
少女が唐突に手すりを越え、屋上の縁に立つ。
手すりにしっかりと掴りながら下を覗く。
怯えたように一歩下がり、しかしまた一歩進む。
手すりから手を離す。
「死ぬのか?」
思わず声をかけた。少女は驚いてこちらを振り向く。
「え?」
僕の存在に気づき、怯えたような表情で僕に問いかける。
「いつからそこに?」
「君よりは早く来ていたと思うよ。」
「ずっと見ていたんですか?」
「いや、考え事をしてた。気づいたら君がそこに立っていた。」
「全然気づかなかった…。」
少女はここの生徒だろう、制服を着ている。
身長は大きくない、150cmほどだろうか。髪は肩にかかるくらい。
綾瀬は結構背が高かったな、165cmはあったはずだ。髪も長かった。
いつの間にか少女と綾瀬を比べている自分に気づく。
少女は相変わらず怯えたような瞳で僕をじっと見ている。
僕は何か言わなければならないような気がして、
しかし何を言ったら良いのかわからないまま、適当に思いつくことを喋った。
「そこから飛び降りる気なのか?」
「そういうわけじゃ…。」
「飛び降りないのか?」
「…。」
わずかに俯いた少女を夕日が照らす。
「飛び降りるにしても、少し待ったらどうだろう。」
「え?」
「せめて太陽が沈むまで見ていたらいいよ、夕日が綺麗だ。」
「はあ…。」
自分でも可笑しなことを言っているのに気づき、目を逸らす。
顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。夕日の赤さに紛れるだろうか。
少女もまた視線を逸らし、夕日に向ける。
僕は手すりを越え、少女の横に並んだ。
僕たちはそのまま、日が沈むまでそうしていた。
「沈んじゃいましたね。」
気づくと少女はこちらを向き、下から僕の顔を覗き込んでいる。
その距離の近さに自然と鼓動が高まる。なんとか平静を装い、答える。
「そうだね。」
「帰りましょうか。」
「もう自殺はいいのかい?」
「お腹空いちゃいました。よかったら一緒に何か食べませんか?」
少女の顔には先ほどまでが嘘だったかのような明るい笑顔があった。
僕は多少戸惑ってしまう。なんなんだこの子は。
「おいしいラーメン屋さんを知ってるんですよ。」
「わかった、行こう。」
僕は少女に従うことにした。正直なところ、空腹を感じてもいた。
朝から何も食べていないことを今更ながら思い出した。
ラーメン屋は駅の近くにあるらしい。学校から駅までの道を僕らは歩いた。
少女は僕の学年とクラスを尋ねた。僕は高校の時のそれを答えた。
3年2組、出席番号3。出席番号は男女別で、綾瀬のそれも3だった。
入学したてのころ、出席番号順に並べられた席は隣同士で、
それをきっかけに仲良くなったのだった。
「私は浅井夕菜、2年5組です。よろしくね、先輩。」
すっかり元気になった少女の声で現実に戻される。
「なぜ自殺なんてしようと思ったの?」
「なぜって言われても…なんだか嫌になっちゃったんです。」
あっけらかんとした態度に戸惑いを覚えつつも、僕は更に聞く。
「何が嫌になったの?」
「全部です。何もかも。」
「いじめられたとか?」
「ううん、そうじゃなくて。これでも友達は多いほうなんですよ。」
夕菜はそう言いながら笑顔を僕に向ける。
そこには、何かしら人を惹きつけるようなものがあった。
「そうか、僕とは正反対だ。」
「友達少ないんですか?」
「…ほとんどいない。」
「そうなんですか、ごめんなさい。」
「いや、いいんだ。別に困らないよ。」
「強いんですね。」
「こういうの強いって言うのかな?」
「だって、私は一人じゃ生きていけません。寂しくて。」
「僕だって、一人っきりで生きているわけじゃないさ。」
ラーメンを食べ終え、僕たちは帰路に着く。
別れ際、夕菜からまた会えるか、と問われた。
僕はなんと答えてよいかわからなかった。
正直言って、彼女と一緒にいるのは辛かった。
彼女のことが嫌いなわけではない。
なぜだか綾瀬のことを思い出してしまうのだ。
問いに答えない僕に、少し悲しそうな顔を見せて、夕菜は言った。
「明日も自殺にチャレンジしようかな。」
「え?」
「同じ場所、同じ時間。止めにきてください。」
そう言うと夕菜はそのまま走っていってしまった。なんと勝手な女だろう。
人の心を弄ぶような人間を、僕は軽蔑する。
おそらく、はじめから自殺する気なんて無いに違いない。
寄りかかる相手を見つけたから逃すまいとして嘘をつく。脅す。
卑劣なやり方だ。綾瀬はそんなことはしなかった!
また夕菜を綾瀬と比べている自分に気づく。
何を血迷っているんだろう。二人を比べてどうなるんだ。
しかしどんなにそう考えても、いや、考えれば考えるほど
少女の中に綾瀬の影を感じてしまう。
僕は決めた。
もう二度とあの屋上には行くまい。夕菜とは二度と会わない。
その後一ヶ月間、僕は全くの無気力と共に日々を過ごした。
まさに抜け殻のような状態だった。
大学にもほとんど行かなくなっていた。
毎日夕方には高校へ行った。けれど中には入らなかった。
学校の外からは屋上の様子はわからなかった。
夕菜はあの翌日、屋上にいたのだろうか。
おそらく、彼女はそこで僕を待っていたはずだ。
僕が現れなかったことをどう思っただろう。
悲しんだだろうか。腹を立てたかもしれない。
少なくとも死んではいないはずだ。そういうニュースは聞いていない。
屋上に行きたかった。夕菜に会ってもう一度話をしたかった。
その気持ちは日に日に強まっていった。
気づくと僕は屋上へと繋がる階段を上っていた。
何をしているんだ。もう二度と来ないと誓ったのに。
すぐに帰ろう。あそこには何もない。行くべきじゃない。
引き返そうと思い、振り向いた僕の目に一人の少女が入ってくる。
夕菜だ。彼女はとても驚いているようだった。
もっとも、彼女の目に映る僕も同じような顔をしていただろう。
「遅いよ…どうして来てくれなかったんですか。」
「…。」
「一ヶ月待ちました。」
「…ごめん。」
「私なんか死んじゃえば良いって思ったんだ。」
「そんなことは…それに、君は結局飛び降りていないじゃないか。」
「それは…。」
いかにもばつが悪そうに俯く彼女を見て、僕はほっとした。
僕たちは屋上に出た。
手すりに寄りかかり、何をするでもなくただ黙っていた。
何か話をするべきなのだろうか、僕にはわからなかった。
校庭では野球部が練習を終え、片付けを始めている。それを眺めていた。
僕たちは長い間ずっとそうしていた。
太陽は傾き、少しずつ赤みを増してゆく。
ふと横を見ると、夕菜の顔を夕日が赤く染め上げていた。
綺麗だった。夕日のことじゃない。夕菜だ。
心にかかった靄のようなものが次第に消えていく。
それにしたがって、中にあったものがはっきりと姿を現す。
夕菜と会って以来ずっと感じていたそれの正体を、
僕はようやく確かに認識することができた。
そうか、僕はこの子に惹かれていたのか。
それを認めたくなくて、いちいち綾瀬と比べて、
彼女の醜いところを必死で探していたのかもしれない。
自分の醜さを呪う。最低なやつだ。
僕が横顔に見入っていることに気づくと、夕菜は恥ずかしそうに俯いた。
気のせいか夕菜の顔は赤みが増したような気がした。
僕の手が彼女の肩へと伸びる。そしてそのまま背中に回る。
二人の距離が縮まる。彼女の手もまた、僕の背中へと回される。
今や二人の距離はゼロになっていた。
間にあるものはお互いの着ている制服のみ。
それすらも存在しないかのように感じられた。
ふいに彼女の身体が離れる。僕の顔を覗き込む。
その目が閉じられ、少しずつ近づく。
僕は彼女の唇に、自分のそれを重ねた。目を閉じる。
どれだけの時間が経ったのか、正確にはわからない。
夕菜の唇は柔らく、そして温かかった。
彼女の体温が、僕の中で凍っていた何かを溶かすのを感じた。
日が沈むと僕たちは屋上を後にした。
今日はラーメンはなしだ。少し寂しいような気がする。
「今日は早く帰らなくちゃいけないの。ごめんなさい。」
「謝ることはないよ。」
「次に会うのはまた一ヶ月後、なんてことはないですよね?」
「僕はもう一ヶ月も耐えられそうにない。」
「よかった。」
夕菜「そういえば3年2組って言ったの、あれ何かの間違いですか?」
すっかり忘れていた。夕菜はあの後、3年生の教室まで行って僕を探したのだろうか。
「あ…いや、間違いというわけでは…。」
「じゃあ嘘ですか?」
「…まあ、そういうことになる。実を言うと、僕はここの生徒じゃないんだ。」
「コスプレが趣味なんですか?」
「それは断じて違う。僕は卒業生なんだ。懐かしくなって潜り込んだ。それだけだ。」
「ふぅーん。」
「信じてくれているのかな。」
「信じましょう。」
「ありがとう。」
僕たちはまた会う約束をして、それぞれの帰路についた。
家に帰ると、僕は部屋の本棚の整理にとりかかった。
すべて処分するつもりだった。
綾瀬のことを忘れたいわけじゃない。
けれど、そろそろ彼女の死を受け入れなければならない。
本を捨てることでそれが可能になるような気がしたのだ。
少しもったいない気もする。なに、また新しい本を買えばいいさ。
あの夏以来止まっていた僕の時間は、確かに動き出そうとしていた。
僕は窓を開け、外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
少しだけ冷たい空気が、長かった夏の終わりを感じさせた。
と、実はこれで終了です。
オチが思いつかんかった。ごめん。
どうしても納得いかない方のために少しだけエピローグ書きました。
読まない方がいいかも。
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次のゴミの日に僕は全ての本を処分した。
部屋の本棚たちは、長年の付き合いの友人を
一度に全て失くしてしまったことに多少不満そうであった。
とにかくこれは新たな一歩なのだと僕は思った。
寂しい気持ちがなかったわけではないが、不思議と後悔はなかった。
おそらく出会いと共に別れは存在するのだろう。
さようなら我が青春の思い出たち。
さようなら愛しいライトノベルコレクション。
シャナかわいいよシャナ
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コメント
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(3203) Posted by
( ;∀;) イイハナシダナーって思ったら最後吹いたwwwwww#- 2007.02.16 Fri 18:30 URL [ Edit ]
-
(3206) Posted by ( ゚д゚ )
ちょwww最後wwwwwww#- 2007.02.16 Fri 19:03 URL [ Edit ]
-
(3208) Posted by 名無しさん
エ!?∑(゚Д゚;≡;゚Д゚)ナニナニ!?
もしかして出てきた女の子2人って・・・#- 2007.02.16 Fri 20:30 URL [ Edit ] -
(3209) Posted by ( ゚д゚ )
台無しwwwwwww#- 2007.02.16 Fri 21:06 URL [ Edit ]
-
(3213) Posted by ( ゚д゚ )
長い
誰か産業で#- 2007.02.16 Fri 21:35 URL [ Edit ] -
(3214) Posted by ( ゚д゚ )
※5
シ
ャ
ナかわいいよシャナ#- 2007.02.16 Fri 22:00 URL [ Edit ] -
(3217) Posted by 名無しさん
どうしてもマヨネーズに目がいってしまう#- 2007.02.16 Fri 22:46 URL [ Edit ]
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(3220) Posted by ( ゚д゚ )
妹かと思った#QSVsYND2 2007.02.16 Fri 22:54 URL [ Edit ]
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(3223) Posted by
最後の2行で感動が全て台無しww#- 2007.02.17 Sat 01:00 URL [ Edit ]
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(3224) Posted by 名無し
俺の感動とコーヒー返せwww#- 2007.02.17 Sat 01:00 URL [ Edit ]
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(3227) Posted by ( ゚д゚ )
いや実際感動したからいいんじゃないかな
こういう話しすっごく好きだし、作れる人も凄いと思うよ。
これからも良作どんどん作ってくれるのを期待しています#- 2007.02.17 Sat 02:10 URL [ Edit ] -
(3229) Posted by 名無しさん
ワロス
メリハリをつける上で最後に笑わせるのはしゅぐれた手法だぜ
読者に優しい小説だと思うんだぜ#- 2007.02.17 Sat 02:41 URL [ Edit ] -
(3234) Posted by ( ゚д゚ )
この手法、話、、オチ、すべて好きだ。感動したといっても過言でない。
だが、せっかくだし言わせてくれ。
最後w#- 2007.02.17 Sat 11:26 URL [ Edit ] -
(3235) Posted by ( ゚д゚ )
良い話…
けど最後w#- 2007.02.17 Sat 12:53 URL [ Edit ] -
(3237) Posted by ( ゚д゚ )
最後w#- 2007.02.17 Sat 13:52 URL [ Edit ]
-
(3241) Posted by ( ゚д゚ )
この小説は いい話だよ、本当に。
でも最後 ライトノベルってwwwwwwwwwww#- 2007.02.17 Sat 16:54 URL [ Edit ] -
(3247) Posted by
村上春樹っぽい文体だな
好意的な意味で。#- 2007.02.17 Sat 18:05 URL [ Edit ] -
(3269) Posted by ( ゚д゚ )
なかなか面白かったけど
しゃべり方が古臭いっていうか、高校生がそんなこというのかな
っと思った。
ついでに現実もこんなに積極的な女の子ばっかりだったらいいのに#- 2007.02.18 Sun 01:13 URL [ Edit ] -
(3283) Posted by 名無しさん
良くできた良い話だな
でも最後ww#- 2007.02.18 Sun 10:59 URL [ Edit ] -
(3306) Posted by ( ゚д゚ )
いい話だ
気づいたら文章の中に引き込まれていた
そして最後で現実に戻った#- 2007.02.18 Sun 18:04 URL [ Edit ] -
(5625) Posted by ( ゚д゚ )
オチwwwwww#- 2007.03.31 Sat 14:56 URL [ Edit ]
-
(6791) Posted by ( ゚д゚ )
いや
実際シャナ可愛いからいいんじゃないかな#- 2007.04.23 Mon 23:39 URL [ Edit ]
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