放火犯を捕まえろ
503 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 11:05:36 ID:6lSygPxe
小学生のときの話、確か四年生くらいだったかな。僕は気が小さいやつだった。
そんなに酷いいじめを受けてはいないけど、よく絡まれる(いじられ役)だった。
周囲から目を付けられないように、静かに過ごしていた。でもある日事件に遭遇した。
うちの小学校の校庭の隅っこに、簡素なつくりの屋外トイレがあった。
何故かそのトイレは1年に1回くらいは放火されてぼやになってた。
校庭を挟んで職員室の対角線にあったから教師の目も届きにくかったんだろう。
数少ない友人と並んで帰っていたときに、そのトイレから煙が出てるのを目撃した。
「あれ、もしかして放火かな?」と友人に話すと、彼はとても驚いていた。
「やっべ!どうするよ!?職員室に行こう!」と興奮気味に僕の腕を掴んだ。
だけど教師が駆けつける頃には、いつも犯人は逃げているという僕は話を聞いていた。
いつもはいじめられっこ気質でビビリだったけど、そのとき何故か僕は強い正義感に駆られた。
「○○君は職員室に行って、逃げられる前に犯人の顔を見てくる」と自然に口に出ていた。
友人は驚いていたが時間が無いのを理解して、「あんまり無理するなよ」と走っていった。
いつも友人に庇ってもらっていて、僕は何か誇れることをしたいと思っていたのかも知れない。
とにかく急いで走っていった。校庭の途中ですれ違う奴らは、この事件を楽しんでいる感じだった。
僕はそいつらに、「誰か逃げてくるかもしれないから、顔を良く見ておいて!」と伝えていった。
凄い勢いで走ったのと、緊張しているせいもあって到着する頃にはかなり息切れしていた。
トイレの裏側に周ると、軽薄そうな中学生の二人組みを見つけた。愉快そうに話している。
僕は顔を記憶しようと凝視した。そのとき自分の足元に鞄が置いてあるのに気づく。
それは兄が通っている中学の指定の鞄で、見覚えがあった。その中には当然私物が入っている。
顔を覚えるよりも鞄を持っていったほうが確実に捕まえられる、僕はそう考えて鞄を掴みあげる。
でもその鞄にはチェーンが付いててかなり音が鳴ってしまった。それで気づかれた。
504 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 11:06:12 ID:6lSygPxe
「テメェ!何してんだ!」と怒鳴る中学生。今になってみればそれはこっちの台詞。
でもその時はとにかく怖かった、「す、すいません!」とか咄嗟に素で謝っていた。
相手が掴みかかろうと走ってくる。僕は走り出して職員室まで走っていく。
でもすっかり息が切れている上に、僕は運動は剣道以外はまったくできない。
すぐに息が切れて速度が落ちる。でも2人の中学生は高速で追いかけてきている。
もう駄目だと思った。でもその時に職員室の方から友人とクラス担任が走ってきた。
友人は僕の危機を察したらしく「あいつらが犯人だ~!」とか大声で叫んでる。
後ろの中学生は教師の姿にやばいと気づいたのか、身を翻して塀を乗り越えて逃げていった。
その後に僕は鞄を担任に渡した。中の教科書にはご丁寧に名前が書いてあったらしい。
そいつらは捕まって叱られて一件落着。僕も怖かったけどすっきりした気分になった。
翌日の学校では放火が少し話題になってた。僕は別に自分の活躍を語るつもりは無かった。
居合わせた友人にも大したことはしてないから、言いふらさないでと頼んでいた。
友人にも心配をかけた訳だし、結果としては誇れない事件だと考えていたからだ。
その日の休み時間いじめっ子の代表みたいな奴が話しかけてきた。何だかニヤニヤしている。
僕はまた訳の分からない因縁をつけられて、絡まれるのかと思って憂鬱になった。
だけどそいつは「お前、意外と凄ぇ奴じゃん!」とか言い出した。
よく分からなくて「なにそれ?」と言うと、昨日に僕がしたことを見ていたという。
僕は気づかなかったけど、犯人を逃がさないように声をかけていた奴らの中にいたらしい。
それからはあんまり絡まれなくなった。何より僕自身も前向きになれた。
誇れるものの無かった僕の中に一つだけ武勇伝が出来た。それが嬉しかった。
その事件の時の友人とは高校3年生になった今でも、学校は違うけど仲良くつるんでる。
つい最近にその事件のことが話題になった。彼はやっぱり僕は凄いと言っている。
それでも僕は回りに心配をかける武勇伝はもういらないと思った。
これが平凡に過ごしてきた僕の、唯一の武勇伝です。
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小学生のときの話、確か四年生くらいだったかな。僕は気が小さいやつだった。
そんなに酷いいじめを受けてはいないけど、よく絡まれる(いじられ役)だった。
周囲から目を付けられないように、静かに過ごしていた。でもある日事件に遭遇した。
うちの小学校の校庭の隅っこに、簡素なつくりの屋外トイレがあった。
何故かそのトイレは1年に1回くらいは放火されてぼやになってた。
校庭を挟んで職員室の対角線にあったから教師の目も届きにくかったんだろう。
数少ない友人と並んで帰っていたときに、そのトイレから煙が出てるのを目撃した。
「あれ、もしかして放火かな?」と友人に話すと、彼はとても驚いていた。
「やっべ!どうするよ!?職員室に行こう!」と興奮気味に僕の腕を掴んだ。
だけど教師が駆けつける頃には、いつも犯人は逃げているという僕は話を聞いていた。
いつもはいじめられっこ気質でビビリだったけど、そのとき何故か僕は強い正義感に駆られた。
「○○君は職員室に行って、逃げられる前に犯人の顔を見てくる」と自然に口に出ていた。
友人は驚いていたが時間が無いのを理解して、「あんまり無理するなよ」と走っていった。
いつも友人に庇ってもらっていて、僕は何か誇れることをしたいと思っていたのかも知れない。
とにかく急いで走っていった。校庭の途中ですれ違う奴らは、この事件を楽しんでいる感じだった。
僕はそいつらに、「誰か逃げてくるかもしれないから、顔を良く見ておいて!」と伝えていった。
凄い勢いで走ったのと、緊張しているせいもあって到着する頃にはかなり息切れしていた。
トイレの裏側に周ると、軽薄そうな中学生の二人組みを見つけた。愉快そうに話している。
僕は顔を記憶しようと凝視した。そのとき自分の足元に鞄が置いてあるのに気づく。
それは兄が通っている中学の指定の鞄で、見覚えがあった。その中には当然私物が入っている。
顔を覚えるよりも鞄を持っていったほうが確実に捕まえられる、僕はそう考えて鞄を掴みあげる。
でもその鞄にはチェーンが付いててかなり音が鳴ってしまった。それで気づかれた。
504 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:2007/02/04(日) 11:06:12 ID:6lSygPxe
「テメェ!何してんだ!」と怒鳴る中学生。今になってみればそれはこっちの台詞。
でもその時はとにかく怖かった、「す、すいません!」とか咄嗟に素で謝っていた。
相手が掴みかかろうと走ってくる。僕は走り出して職員室まで走っていく。
でもすっかり息が切れている上に、僕は運動は剣道以外はまったくできない。
すぐに息が切れて速度が落ちる。でも2人の中学生は高速で追いかけてきている。
もう駄目だと思った。でもその時に職員室の方から友人とクラス担任が走ってきた。
友人は僕の危機を察したらしく「あいつらが犯人だ~!」とか大声で叫んでる。
後ろの中学生は教師の姿にやばいと気づいたのか、身を翻して塀を乗り越えて逃げていった。
その後に僕は鞄を担任に渡した。中の教科書にはご丁寧に名前が書いてあったらしい。
そいつらは捕まって叱られて一件落着。僕も怖かったけどすっきりした気分になった。
翌日の学校では放火が少し話題になってた。僕は別に自分の活躍を語るつもりは無かった。
居合わせた友人にも大したことはしてないから、言いふらさないでと頼んでいた。
友人にも心配をかけた訳だし、結果としては誇れない事件だと考えていたからだ。
その日の休み時間いじめっ子の代表みたいな奴が話しかけてきた。何だかニヤニヤしている。
僕はまた訳の分からない因縁をつけられて、絡まれるのかと思って憂鬱になった。
だけどそいつは「お前、意外と凄ぇ奴じゃん!」とか言い出した。
よく分からなくて「なにそれ?」と言うと、昨日に僕がしたことを見ていたという。
僕は気づかなかったけど、犯人を逃がさないように声をかけていた奴らの中にいたらしい。
それからはあんまり絡まれなくなった。何より僕自身も前向きになれた。
誇れるものの無かった僕の中に一つだけ武勇伝が出来た。それが嬉しかった。
その事件の時の友人とは高校3年生になった今でも、学校は違うけど仲良くつるんでる。
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それでも僕は回りに心配をかける武勇伝はもういらないと思った。
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コメント
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(2453) Posted by d
#- 2007.02.06 Tue 00:00 URL [ Edit ]
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(2543) Posted by
いい話聞いた。
オヤスミ#- 2007.02.08 Thu 00:59 URL [ Edit ] -
(12025) Posted by ころ
503の性格の良さが文体に滲み出てるな#- 2007.07.11 Wed 16:50 URL [ Edit ]
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(34149) Posted by 名無し@こっぺぱん
放火したのは自分だけどって言うようなオチかと思った。#- 2008.01.05 Sat 18:20 URL [ Edit ]
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